先日プレゼンテーション研修を受けてきたので、感想をまとめておきます。
今いる会社では昇格したばかりの社員は必須の研修のようで、「とりあえず行ってきて」と言われたのがきっかけです。
いつかプレゼンテーションするときのために... そんな気持ちで参加してきました。
しかし、研修を終えると、プレゼンテーション以外でも学ぶことが多かったなあと... なりました。
研修について
1日(9:30-17:30)の研修で、Zoomで参加しました。
まずは、プレゼンテーションとは何か、という話と、この研修の目的の話がありました。
プレゼンテーションとは?
ビジネスにおけるプレゼンテーションとは、聞き手に対して話し手が意図する方向に判断や意思決定を行ってもらえるように説得するコミュニケーションである。
ただの発表 | プレゼンテーション |
---|---|
聞き手は、とりあえず聞いていてくれればいい | その後、聞き手になんらかのアクションを起こさせることが目的 |
話し手の興味関心に即して構成・実施 | 聞き手の興味関心に即して構成・実施 |
分かりやすさに配慮するが、最終的には「わかってくれない人は仕方ない」のスタンス | 都度、相手の理解と反応を確認しながら進める |
質疑応答は合っても、基本的には「独り言」 | 次のアクションに繋がる合意を形成するために双方向のやり取り |
ただの発表との違いは、 相手を動かすための「対話」でなければならない ということですね。
そのために大切なことは2つだそうです。
- 相手の論点から考える
- 相手を動かすための対話となること
研修のゴール
研修後の目標は、次の2点を実務で実践できるようになることです。
- プレゼンテーションを「対話」として成り立たせる
- プレゼンパッケージを効果的・効率的に書く
- プレゼンパッケージ:報告書、提案書、説明資料など
- 効果的:伝えたいことが伝わり、狙い通りに聞き手を動かす
- 効率的:手戻り、迷うことなく資料が作成できる
研修での注意点
答えを出したいことを質問形式で書き出すこと。
たとえば...
「プレゼンテーションについて」
これだとプレゼンテーションの何なのかわからないですよね。
題材?話す時間? ...
そうならないように、質問形式にしてはっきりさせよう、とのことでした。
「プレゼンテーションの題材は何か?」
「プレゼンテーションで話す時間はどれくらいか?」
こんな感じです。
確かに、メールの題名で「〜〜について」って書きがちですけど、本文読まないとわからないことが多いなあと思ったりしました。
また、会議名も「新規事業について」とかだったりすると、「新規事業やるか、やらないか」とか「新規事業でどんなことやるか」みたいに参加者が思う論点がバラバラになったりするなあという話でした。
基本的な道具立て「論点」
まず初めは、前章でも出てきた論点のお話です。
論点とは
論点とは、問い、考えるべきことです。
コミュニケーション活動には、必ず論点が存在します。
たとえば...
報告:プロジェクトは期限までに終了できそうか?
問合せ:料金プランを変更するには、どうすればいいか?
商談:弊社サービスの特徴は何か?
なぜ論点が重要か
よく、話が噛み合わないなあ...って思うことありますよね。
そういったミスコミュニケーションが発生している場合って、メッセージ(伝えようとしていることの内容)ではなく、論点がズレていることが多いんです。
たとえば...
A:「Bくん、進捗どう?」
B:「えーっと、〜〜機能の設計をしています。」
A:「いやいや、計画通り進んでるかどうかYes/Noで答えてほしいんだけど...」
よく聞く話です。
Aは「計画通り進んでいるか」の論点で話していますが、Bは「今している作業は何か」の論点で話しています。
このようなケースもあるように、論点はズレやすいので、プレゼンテーションでは論点を明確に設定してコントロールする必要があると言えます。
論点がズレないための工夫
論点がズレないようにするためには、「問い」の形式で設定すると効果的です。
お、研修の注意点で出てきたやつだ、っとなりました。
前章でのA,Bのやりとりで論点がズレてしまったのも、Bだけが悪いのではなく、Aの聞き方も工夫する余地がありそうですね。
たとえば、「Bくん、進捗どう?」ではなく、「Bくん、計画通り進んでる?」のように聞けば論点はズレなかったかもしれません。
「〜〜について」のようないろんな解釈が生まれやすい表現はしないことが論点がズレないテクニックと言えそうです。
ストーリー構成
プレゼンで必ず悩む、ストーリーをどのように構成していくか、のお話です。
プレゼンで一番大事なステップが、このストーリー構成です。
研修の最後にチームごとにプレゼンする、となったのですが、スライド作成が10分程度だったのに対して、ストーリー構成には30分でも足りないくらいでした。
それくらい大変、また学ぶことも多かったです。
ストーリー構成の前に...
ストーリー構成を考える前に、整理しておくべきことが2つあります。
それは、ゴールを設定することそして聞き手が気にしそうな論点を知ることです。
まずプレゼンテーション目的は、「聞き手になんらかのアクションを起こさせること」なので、どんなアクションを起こして欲しいのか設定します。
聞き手(上司、役員)に承認、承諾していただきたい、のようなアクションですね。
そしてプレゼンテーションは対話なので、誰に対して話すのかによって、論点も変わってきます。
新人向けなのか、上司・役員なのか、専門知識があるかないか...
聞き手に合わせてストーリーも変わってくるので、この2つを事前に整理しておくと良さそうです。
論点を使ったストーリー構成の方法
聞き手が気にしそうな論点からストーリーを構成します。
やることは3つです。
- 聞き手の問題関心を想定して、論点を洗い出す
- 論点を順序づけする
- 論点をタイトルとして、一連の空スライドを作成する
まず、こんな感じの表を用意しておきます。
順序 | 論点 | 伝えたいメッセージ |
---|---|---|
表を作ったら、思いつくままに論点を書き出していきます。
次に、順序づけしていきます。
基本的には、What? Why?の話から、具体的なHow?の話に展開していくと分かりやすいとされています。
また、ストーリー構成のパターンは2つあります。
結論先行型 | 背景先行型 |
---|---|
What -> Why -> How | Why -> What -> How |
聞き手が結論を求めている | 聞き手が乗り気じゃない |
結論 -> 理由 -> 事例 -> 結論 | 大枠・全体の話 -> 具体的な話 課題は何か? -> どうやって解決するか? |
構成の工夫:本日の目的
最初に本日の目的を伝えることで、聞き手は「プレゼンテーションをどういうつむりで聞いていればいいか?」が明確にわかるようになります。
たとえば、「検討結果を報告し、実施の判断をいただきたいと考えております。」のような感じです。
それによって、聞き手から「的外れな論点」に基づいた質問が飛んでこなくなるメリットもあります。
構成の工夫:Next Step
プレゼン後は聞き手のアクションを促したいので、最後のページに「Next step」として、聞き手に依頼したいことなどを用意しておくのも良いです。
文書のボリューム
スライド作るときに良く思うのが、「何枚くらい用意すればいいんだろう..?」問題です。
次の式で計算すると良いそうです。
作成するページ数 = プレゼンの正味時間 ÷ 1枚あたりの説明時間
プレゼンの正味時間とは、質疑応答の時間を30%~50%として、それを差し引いた時間のことです。
1枚あたりの時間は2,3分で考えておけば良いそうです。
質疑応答50%は多いなあと思っていたのですが、プレゼンはあくまで合意形成のインプットにすぎないとのことでした。
質疑応答で合意形成をすることの方が重要ということを心がけることがポイントです。
スライド作成
ストーリー構成ができたので、スライドを作成していきます。
構成があるからあとはお絵かきするだけ!と思っても、なかなか進まないこともあったり...
どんなまとめ方がいいかなあを調べてたら、森に迷い込んでしまって時間がかかってしまったり...
今までぼんやりと苦戦していたのですが、今回の研修を受けて次から上手くやっていけそうな気がしたので、内容をまとめておきます。
スライド作成の何が難しいのか
なんだろう... と思っていたら、一言で解決してしまいました。
「伝えたいこと(何を伝えるか)」と「伝え方(どう表現するか)」をまとめて考えようとするからです。
今までは、伝えたいことを整理しないまま「とりあえず図を描いてみるかー」とかで進めて、結局「この図なに?」ってなってたような...
確かに、まとめて考えると良くなさそうです。
まずは「伝えたいこと」を先に整理して、その後に最適な「伝え方」を考えるようにしましょう!
伝えたいことをどう整理するか
論点/メッセージ/詳細に切り分けると整理できます。
項目 | 説明 |
---|---|
論点 | そもそも、答えるべき「問い」は何か? |
結論(メッセージ) | 「問い」に対する「答え」は、一言でいうと何か? |
詳細(根拠、具体例) | 「答え」の妥当性を、どのような根拠・具体論で支えるのか? |
論点と結論は、Q&Aの関係になります。
結論 -> 詳細は、なぜそう言える?のか、
詳細 -> 結論は、要するにどういうこと?となります。
ここで重要なことは、余計なことをどれだけ捨てられるかで伝わりやすさが最も左右されることです。
余計なことかどうかは論点を基準として判定します。
余計な情報が入りやすいのは、「詳細」です。
論点を基準として余計かどうか?を判定して、どんどん捨てていきましょう!
ただし、論点に関係ないけどプレゼンの中で伝えたい情報であれば、新しく論点を追加してそこで話すのが良いです。
スライド作成のポイント
極意は、論点ごとに1枚で書くことです。
論点に答えていない話は書かないという姿勢を徹底することで、伝わりやすいスライドを書くことができます。
ポイント
- 論点をタイトルに強く意識して書く
- 問いの形式にすると、結論との対応関係(Q&A)が分かりやすい
- 最も伝えたい結論を、一番目立つ場所に端的に表現する
- 根拠や具体例などの詳細は、直感的に分かりやすいチャートなどを使う
- 余白を恐れないこと
パッと見て、論点がわかる、そこで伝えたい結論が伝わりやすいことが大事ってことですね。
細かいことは絵を使って直感的に表現しましょう。
直感的に表現する方法:図形+テキスト
じゃあ、細かいところを、どうやってお絵かきしていけば... となります。
研修では6パターンの紹介がありました。
- グルーピング
同じグループに分類される項目ごとにまとめて並べます。 - フロー
時系列で見たいときに使います。 - ツリー
細分化して見たいときに使います。 - マトリクス
2つの軸で分析します。 - 変化、要因、課題/施策
BeforeからAfterの変化が分かりやすくなります。 - 対比
複数の項目を比較するときに使います。
一般的には、左が悪い、右が良いとなります。
組み合わせると、さらに分かりやすくなる場合もあります。
テキストを書くときのポイント
- 論点に答える
- スライドごとの論点の答えになるように
- シンプルな短文に
- 文章の「骨」を見極めて、不要な文や修飾語を捨てる
- 字の少なさよりも分かりやすさ
- 主語を省略しすぎない
- 箇条書きで構造化
- 項目数は5つ以下
- 並べる順番も意識する(重要度、ステップごとなど)
- 相手の理解レベルに合わせる
- 論理の飛躍を潰す
- 専門用語を安易に使わない
ここで出たポイントって、自分一人で気づくことってなかなかできないんですよね...
ここが気になって講師の方に質問してみたのですが、次のような回答いただきました。
- 上司の方にレビューしていただく機会をふやす
- 論点ベースのストーリー構成決めたとき
- スライド作成後
- 自分のプレゼンしている様子を録画して、見返してみる
基本的には、他の方にみていただく機会をふやすのが良さそうです。
自分で気付けるようにするためには... の回答に対しては、自分の発表を自撮りすると、課題が見えてくるそうです。
照れくさい感じはあるけど...
直感的に表現する方法:グラフ
グラフの解説はあまりありませんでした。
まあ、構成がしっかりしていることが大事!って雰囲気でおまけみたいな感じなんですかね。
一応、テキストの内容をメモしておきます。
伝えたいことによって、適切なグラフを使い分けます。
- 量の比較
- 棒グラフ
- 構成比の比較
- 棒グラフ
- 円グラフ
- 時系列の推移
- 棒グラフ
- 折れ線グラフ
- 相関・ばらつき
- 散布図
- 全体バランス
- レーダーチャート
ここにあるのは一例だと思うので、他に良さそうなものがあれば、どんどん取り入れていけばいいと思います。
困ったら、ここを見返すぐらいで思っておけば良さそう。
ポイントは、グラフ作成後に見返すことです。
論点と結論に沿ったものになっているかは確認しておいたほうが良いです。
プレゼンテーション
準備ができたので、いよいよプレゼンテーションです。
プレゼンテーションに関するよくある誤解
苦手意識を持っている人は、次の2つの誤解をしていることが多いそうです。
- プレゼンテーションの場が成否を握っている
- 100点満点を目指している
まず一つ目ですが、大事なのは準備です。
プレゼンテーションの場では、準備したことを話すだけなので必要以上に身構えることはありません。
そして二つ目ですが、たいていの場合80点のプレゼンテーションで十分です。
スティーブ・ジョブズのようなプレゼンをしたい!しなきゃ...と考えると難しく感じてしまいます。
プレゼンテーションに臨む姿勢で大事なことは、ポイントをおさえて、80点以上を目指すことです。
プレゼンテーションで80点以上を目指すときのポイント
ポイントは次の通りです。
これをおさえておけば、80点以上のプレゼンになります!
- 論点を示す
- スライドの見所を示す、結論を言う前に示すと分かりやすくなる
- ページをめくる前に次ページの論点を言うと、注意を引き付けながらページ間をつなぐことができる
- 結論をシンプルに言い切る
- 「〜〜で、〜〜」、「〜〜ですが、〜〜」を避けて、「〜〜です」、「〜〜ます」で言い切る
- 詳細を構造的に伝える
- 「ポイントは3つあって」のように言うと、聞き手は「箇条書きモード」で聴ける
- 幹から枝葉の順番で話す
- 「今どこ?」ナビゲーション
- 「ここまでが課題は何か?と言う話になります。ここからどう解決するか?の話になります」
- 全体感への言及
- 「5分で説明、その後5分で質疑応答と言う感じで進めます」
- 「今後の改善点は大きく3つあって、〜〜」
- 簡潔な言い回し
- 「〜〜は増えている状況となっております」 -> 「増えています」
- 「結論といたしましては」 -> 「結論は」
- 「えー」、「あのー」などの不要語をなくす
いやー、とは言っても「えー」「そのー」って言っちゃいますよね(笑)
そんな時は次の気持ちで挑んでみてください。
- 間を恐れない
- ずっと喋っていないといけないと思って、「えー」が出てしまっている
- 話すことを整理する
- プレゼンまでの準備で整理してきたから大丈夫!
質疑応答と論点の関係
プレゼンが終わると、聞き手からの質問が飛んできます。
この質問は、大きく次の2パターンあるそうです。
- プレゼンテーションでカバーされた論点
- 内容から派生した比較的小さな論点
- プレゼンテーションでカバーされなかった論点
よく「全く想定外の質問がきた!」ってのが失敗談としてありますが、これは2つ目のカバーできなかった論点からきている質問です。
これについては、事前の論点の洗い出しで漏れないようにしておきたいです。
相手の論点をベースにストーリーが構成されていれば、「全く想定外」な質問はやってこなくなります。
また、最初に「本日の目的」を伝えておくことで、「そもそも論」のような意地悪な質問がなくなります。
質疑応答のコツ
自分が聞き手のときに、「質問したけど、期待していた回答がこなかった...」なんてことありませんか?
質疑応答は、「真の論点」を見極めて、確認のやり取りをしてから答えることが重要です。
例えば聞き手からの質問で...
A:「このデータはどうやって取ったのですか?」
と来たとします。
これは表面的な論点であり、Aの真意としては...
A:「このデータは信用できるのか?」
を聞きたいのかもしれません。
このように、最初の発言は、とりあえず口にした表現手段のひとつであり、本当に聞きたいことを確認する必要があることに注意してください。
プレゼンテーションの目的は、その後聞き手にアクションを取ってもらうことです。
質疑応答で合意形成できれば、前向きな気持ちでNext Stepへ進みやすくなります。
研修を終えて...
最後に、グループごとにプレゼンテーションして終わりました。
今までは、聞き手のことを考えていない、独りよがりなプレゼンをしていたなあと痛感しました。
お絵かきして結論をバン!と突きつけてましたが、論点でストーリー構成を考えること、プレゼン後に聞き手をどうアクション取ってもらいたいか視点を持つことを学びました。
今回はプレゼンテーションの研修でしたが、それ以外でもコミュニケーションで大事なことを学べたなあと思いました。